マンガ「だらしない夫じゃなくて依存症でした」は2020年に単行本が発売されました。
作者は三森みささん、依存症啓発を目的として厚生労働省や専門家監修の元に描かれた作品です。
これまで依存症について理解を深めてきたつもりでしたが、このマンガを読んで新たな視点や気づきが生まれました。
福祉に携わっている方や精神保健福祉士を目指している方は必見です。
気付いた点やおすすめしたい理由をまとめました。
ストーリー仕立てでわかりやすい
「だらしない夫じゃなくて依存症でした」は、アルコール依存症になったショウと、家族で妻のユリの回復までの物語です。
ユリとショウは学生時代に出会い、結婚後はそれぞれ会社勤めをしていました。ショウのお酒の飲み方にユリが疑問を持ち始めるところから話は始まります。
ショウはアルコール依存症ですが、薬物やギャンブルの依存症から回復したキャラクターもユリの近しい人物として登場します。
最初は「依存症の理解を深めるために、、」と軽い気持ちで読み始めたのですが、思わず涙が出そうになる場面も。
ショウはアルコール依存症の影響でユリにつらく当たることが多くなるなど、以前の優しい面影は人が変わったように消えていきます。
毎日お酒の後始末に追われ疲れ切ってしまったユリは離婚さえ考えるようになります。
誰にも相談できない主人公の葛藤が痛いほどに読み手に伝わります。
内科的な病気であれば周りに心配されたり優しくされたりしますが、依存症はなかなかそうはいきません。
あることに「依存」してしまっているがために、何としてもそれを続けるために本人は周囲にウソをついたり行為を正当化したり、勢いでひどい言葉を投げつけることもあります。
そのようなことが繰り返されるうちに、周囲は疲弊し傷付き、ときには憎しみさえ生まれることも。
「病を憎んで人を憎まず」は言葉で言うほど簡単なものではないようです。
心揺さぶられるストーリーですがそれだけではありません。
依存症について脳の病気であることが医学的見地から大変わかりやすく示されています。
イネーブリング、スリップなどの用語についてもマンガを通して知ることができます。
参考になる具体的な行動がわかる
最初のうち、本人は病識(自分が病気であるということの認識)がないことが多いため、周囲や家族が問題に気づくことが多いと思います。
しかし問題に気づいても、病識のない本人を病院に連れていくことはかなりの困難が予想され信頼関係も影響されかねません。
そこで家族がどこで相談に乗ってもらえるのか、本人とどのように接したらいいのか、についての助言がユリたちの行動を通して知ることができます。
ちなみにユリは相談先として地域の保健所を訪れます。
精神保健福祉士として勉強になる
依存症には以前から関心があり理解を深めてきたつもりでした。
しかしこのマンガを読んでまた新たな気づきや学びが生まれました。
例えばスリップについて、薬物依存から回復した登場人物がショウに向かって「(スリップしたときは)何がきっかけで使うのかを学ぶチャンス」という話すシーンがありました。
スリップは回復過程という認識はありましたが具体的な言葉に、なるほどそうかと納得しました。
日本は”アルコール=薬物”の認識が低い国だとつくづく思わざるを得ません。
良く言えばお酒に寛容な国。
適量を超える飲酒が心身に与える影響を知る機会がもっとあって然るべきです。
アルコール依存症予備軍は日本国内に数百万人単位でいるともいわれ、決してひと事ではありません。
マンガを通して依存症について再考する機会になりました。
出典:Ⓒ三森みさ『だらしない夫じゃなくて依存症でした』