今回は「医療観察法」についての解説記事になります。その目的や流れなどは国家試験でも頻出ですが、試験後も専門職としても知っておくべき法律です。
大枠はご存知の方も多いと思いますが、実務や精神保健福祉法との関係も含めて解説します。
医療観察法の目的
解説にあたり、原文を参照します。
以下は「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」の第1章総則・第1節目的及び定義から、第1条(目的等)の抜粋です。
第一条 この法律は、心神喪失等の状態で重大な他害行為(他人に害を及ぼす行為をいう。以下同じ。)を行った者に対し、その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより、継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もってその社会復帰を促進することを目的とする。
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律
以降、省略して「医療観察法」と表現します。医療観察法の目的はまとめると下記になります。
- 必要な医療を確保して病状の改善を図る
- 国の責任において専門的な治療を行う
- 社会復帰を促進
条文中の用語の意味は下記のとおりです。
心神喪失等の状態:精神の障害のために善悪の区別がつかないなど、通常の刑事責任が問えない状態
重大な他害行為:①殺人、②放火、③強盗、④不同意性交等、⑤不同意わいせつ、⑥傷害
上記の他害行為について、①から⑤の行為は未遂も含みます。
医療観察法の処遇の流れ
心神喪失者または心神耗弱者(しんしんこうじゃくしゃ)と認められて不起訴処分、または無罪が確定すると、検察官の地方裁判所への申し立てによって審判が開始されます。
審判は、裁判官1名と精神保健審判員(精神科医・鑑定医とは別の医師)1名からなる合議体から処遇・不処遇の決定がされます。
精神保健参与員(精神保健福祉士等)は、審判において精神保健福祉の観点から必要な意見を述べます。
鑑定入院は、裁判官による鑑定入院命令により、精神科病院に鑑定入院します。期間は2ヶ月(最長3ヶ月)です。
入院期間中は鑑定医による診察、保護観察所の社会復帰調整官による生活環境調査が行われます。
また対象者は、付添人(弁護士)をつけることとされています。
審判により「入院決定」か「通院決定」の処遇、あるいは「処遇不決定」の処分になった場合は、医療観察制度の対象外となります。
関係機関によるケア会議の実施は、定期または必要に応じて開かれます。処遇期間は原則3年間ですが、処遇が必要と認められる場合には、2年を超えない範囲で延長が可能です。
医療観察法と精神保健福祉法の関係
精神保健福祉法と医療観察法の関係は、じつは精神保健福祉法第44条に規定されています。下記に1項を抜粋しました。
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行つた者に係る手続等との関係
第四十四条 この章の規定は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律の対象者について、同法又は同法に基づく命令の規定による手続又は処分をすることを妨げるものではない。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
対象者が医療観察法上の入院処遇中で、指定入院医療機関に入院している期間は、精神保健福祉法上の入院規定は適用されません。
具体的には任意入院、医療保護入院、措置入院などです。
通院処遇決定後または入院処遇の退院決定後は、対象者は地域における処遇が開始されます。この期間は、「医療観察法」と「精神保健福祉法」の両方が適用されると解釈できます。
医療観察法 ケア会議の開催について
関係機関によるケア会議は「CPA会議」と呼ばれ、定期または必要に応じて実施されます。
CPA会議の参加者は、処遇実施計画書に基づいて、本人を含む関係者が集まり、処遇状況の報告や社会復帰に向けて話し合いを行います。
関係者は主に、保護観察所の社会復帰調整官を中心に、医師、看護師、心理士、作業療法士、精神保健福祉士、地域の保健所、障害福祉担当部署、精神保健福祉センター、サービス提供事業所などです。
処遇計画は定期的に見直され、ケア会議は必要に応じて開催されます。入院時から退院後、通院期間も必要に応じて支援は継続されます。
以上が医療観察法制度の解説になります。専門職は実際にケースとして関わることがあるかもしれません。
今回は医療観察法について取り上げましたが、精神保健福祉法との関係は下記書籍でもご覧いただけます。
