退院後生活環境相談員の役割について解説【令和6年4月以降】

精神保健福祉法

精神保健福祉法の改正に伴い、これまで医療保護入院者に選任することになっていた退院後生活環境相談員について、措置入院者にも選任が義務化されました。

今回はこの退院後生活環境相談員の役割について、改正の内容をふまえて解説します。

医療保護入院者退院支援委員会の開催についてはこちらからご覧いただけます。

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退院後生活環境相談員の選任と役割

措置入院および医療保護入院は本人の同意を得ることなく行われる入院であるため、権利擁護の観点から可能な限り早期治療・早期退院ができるようにしなければならないとされています。

患者が可能な限り早期に退院できるよう、退院支援の中心的役割を求められるのが退院後生活環境相談員です。

退院後生活環境相談員の責務・役割は厚生労働省の通知によって次のように示されています。

  • 退院後生活環境相談員は、入院者が可能な限り早期に退院できるよう、個々の入院者の退院支援の取組において中心的役割を果たすことが求められること
  • 退院に向けた取組みにあたっては、医師の指導を受けつつ、多職種連携のための調整を図ることに努めるとともに、行政機関、地域援助事業者、その他地域生活支援にかかわる機関との調整に努めること
  • 入院者の支援にあたっては、入院者の意向に十分配慮するとともに、個人情報保護について遺漏なきよう十分留意すること
  • 以上の責務・役割を果たすため、退院後生活環境相談員は、その業務に必要な技術及び知識を得て、その資質の向上を図ること

言い換えると、医師の指導を受けつつ患者本人の意向に十分配慮し、職種・機関の枠を超えて中心となって退院支援の調整にあたること、といったところです。

「医師の指導を受けつつ」というのは、退院できる状態かの見込みや判断ができるのは主治医であるため、「医師の指導を受けつつ」となります。

退院後生活環境相談員の配置の目安は下記のとおりです。

退院後生活環境相談員1人につきおおむね50人以下の入院者を担当

また入院後7日以内に選任することとなっています。

退院後生活環境相談員の資格

退院後生活環境相談員として必要な資格は次のいずれかです。

  • 精神保健福祉士
  • 保健師、看護師、准看護師、作業療法士、社会福祉士または公認心理士として、精神障害者に関する業務に従事した経験を有する者
  • 精神障害者およびその家族等との退院後の生活環境についての相談および指導に関する業務に3年以上従事した経験を有する者であって、かつ、厚生労働大臣が定める研修を修了した者

退院後生活環境相談員の業務内容

退院後生活環境相談員の業務は次のようなものがあります。

  • 入院時の業務
  • 退院に向けた相談支援業務
  • 地域援助事業者等の紹介に関する業務
  • 医療保護入院者退院支援委員会に関する業務
  • 退院調整に関する業務
  • その他の業務

さらに、都道府県が入院者訪問支援事業を実施している場合は、対象者(市長同意入院者)に事業の説明と利用の有無の確認をします。

大切にしたい視点

精神科病院での経験をふまえ、退院支援で大切にしたいと感じた視点をお伝えします。

退院支援において一番大切なのは、患者ご本人の気持ちや地域でどんな生活がしたいか、ご本人の思いや希望に沿った支援に向けていくことです。

次に大切なのは、精神保健福祉士が退院支援におけるスタッフ間の理解を深めていくことだと思います。

退院支援は一人でできることではありません。

制度をうまく利用して、多職種と連携していくことが大切です。

退院後生活環境相談員は平成25年の精神保健福祉改正後に導入されました。同じときに退院支援委員会の開催も義務付けられました。

私が受験を志したのは法改正後で、退院支援委員会がきちんと開催されている病院で実習をすることができました。

しかしいざ自分が病院に勤務したとき、退院支援委員会の開催はさほど定着していなかったため、当初の運営は困難続きでした。

特に難航したのが会議の日程調整で、普段から多忙な関係職種が一堂に会する機会を作ることです。

しかし続けていくうちに、ほかの専門職種のスタッフから事前に都合のいい日にちを教えてもらえるようになったり、業務スケジュール上どうしても出席できないときは、会議用にご本人の近況や課題を事前に記録でもらえたり、少しずつですが定着していく様子が実感として得られました。

精神保健福祉士は自分の仕事として退院支援の重要性を発信して、スタッフの理解を深めていくことも大切だと感じました。