【精神科の入院形態】市長同意入院の流れを解説【令和6年4月以降】

精神保健福祉法

患者本人の入院の同意が取れず家族がいない場合、または家族等の全員が同意・不同意の意志表示を行わない場合には市町村長に同意を依頼することができます。

市長村長が行う入院同意は精神保健福祉法第33条2に規定されています。

第33条2

精神科病院の管理者は、第1項第1号に掲げる者について、その家族等がいない場合またはその家族等の全員がその意思を表示することができず、若しくは同意・不同意の意志表示を行わない場合においてその居住地を管轄する市町村長(特別区の長を含む。)の同意があるときは、本人の同意がなくても、6カ月以内で厚生労働省令で定める期間の範囲内の期間を定め、その者を入院させることができる。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

本記事では「市町村長(特別区の長を含む。)の同意」は「市長同意」として省略しています。

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市長同意入院の対象となるケース

次のすべての要件を満たす場合に市長同意入院の対象となります。

  • 指定医の診察の結果、精神障害者であって、入院の必要があると認められること
  • 措置入院の要件に該当しないこと(措置入院の要件にあてはまるときは措置入院とすること)
  • 入院について本人の同意が得られないこと(本人の同意があるときは任意入院となること)
  • 病院側の調査の結果、以下のいずれかに該当すること
    ア 家族等がいずれもいない
    イ 家族等の全員がその意志を表示することができない
    ウ 家族等の全員が同意または不同意の意志表示を行わない

家族が同意・不同意の意志を行わない場合

前述のウ(家族等の全員が同意または不同意の意志表示を行わない)に該当する者を扱う場合には、単に家族と連絡がとれないだけでは不十分であり、同意または不同意の意志表示を行わない旨を明示していることが必要です。

意思表示をしない旨を示す、とはややわかりづらいですが、要するに家族が「同意・不同意の意志表示はしません」とはっきり示していることが必要ということです。

家族が患者との関わりを拒否することを明示しているときも市長同意の対象となります。下記にパターンを整理しました。

同意または不同意の意志表示をしない→市長同意の対象
患者との関わりを拒否→市長同意の対象
入院に同意しない→市長同意の対象外

病院・市町村にて行われる手統き

同意依頼の流れとしては、病院は患者について、居住地、家族等のうちいずれかの者の有無等を調査し、入院にあたり市町村長の同意が必要である場合には、すみやかに市町村長の同意の依頼を行う必要があります。

さらに同意の依頼は迅速に行われなければなりません。

このことから同意の依頼は電話や口頭で行うことができますが、依頼後はすみやかに医療保護入院同意依頼書を市長村長宛て送付しなければなりません。

市町村の担当者は、病院から入院同意の依頼を受けた際には、既定の聴取表に記載します。

次に担当者は患者が市長同意入院の対象者であるかどうかの確認をする手続きをとります。

患者が虐待等により一時保護措置等を受けていると病院から連絡があった場合には、その内容について事実と相違ないか確認する必要があります。

既定の手続きを経て、市長同意入院の対象者であることを確認のうえ、すみやかに同意の手続きをとります。

同意後、担当者はすみやかに本人に面会し、その状態を把握するとともに市町村長が同意者であることおよび担当者連絡先、連絡方法を本人に伝えます。

入院直後の面会後も、市長同意入院が継続している間は継続して面会を行い、本人の状態や動向の把握に努めることとされています。

また、退院後生活環境相談員と連携の上、医療保護入院退院支援委員会に積極的に参加するほか、本人の意思を尊重したうえで、退院に向けた相談支援につなげることとされています。

ほかに市町村の担当者は、入院者訪問支援事業の紹介や、利用希望を都道府県に伝達する役割も含まれます。

大きな改正点は、家族が同意・不同意の意志表示をしない場合に市長に入院同意の依頼をできるようになったことです。

これにより例え家族がいた場合でも、状況によって市長同意入院の対象となり得ます。

また、目立たないところでは市長同意入院に伴う市町村担当者の役割が拡大されました。

市町村担当者の入院後の面会は改正前から定められていましたが、その実態は明らかではありませんでした。今後も自治体によって運用に差が出てくると思われます。

お読みいただきありがとうございました。

医療保護入院、家族等の同意による入院については下記をご覧ください。